生命保険相談センター

コラム回心転意

筆者:コンサルタント 廣川晴一

2014年11月:学資金準備の落とし穴 -学資保険の代わりの保険-

NPO法人 生命保険相談センター
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廣川 晴一 (ひろかわ せいいち) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー

お子様の教育資金を準備するやり方の一つとして学資保険という保険があります。
以前にも当コラムで取り上げたこともありますが(バックナンバー「2013年11月:学資保険を活用するI -教育費に備える保険-」)、ただお金を貯めていくよりも効率的で、万一の時の保障としても使える優れた商品です。

しかし近年、この学資保険の代わりに、全く別の種類の保険商品を提案する保険会社や代理店が増えています。 多くの場合、「学資保険よりもお金が貯まる」「メリットがある」と謳っておりますが、果たして本当でしょうか?


お金が貯まる保険とは?

まずは学資保険の代わりとなる「お金が貯まる保険」がどのようなものなのかをご説明しましょう。

最も広く提案されている商品は「低解約返戻金型終身保険」(以下、低解終身)と呼ばれている保険です。 終身保険(=死亡保障が一生涯続く保険)の一種ですが、普通の終身保険とは異なる点があります。 違いを分かりやすくするために、まずは普通の終身保険の仕組みからご説明します。

図1 一般的な終身保険の特徴

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終身保険(図1)は、主にお葬式費用などを準備するため一生涯の死亡保障(図の例では保険金400万円)を目的に加入される保険ですが、 解約した時にお金が戻ってくる(=解約返戻金)商品が多く、年齢や保険料を支払う年数、解約のタイミング等により支払った保険料よりも解約返戻金の方が多くなる場合があります。

この仕組みにより学資保険代わりの、貯蓄のための保険としても利用することが出来るのです。

図1のような一般的な終身保険の場合、支払う保険料に対して解約返戻金がほぼ同じペースで増加し、保険料支払いが終了する期間(図1では10年目)からさらに数年後に、支払合計額以上の金額になります。

図2 低解約返戻金型終身保険の特徴

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一方、低解終身(図2)の場合保険料を支払っている間は解約返戻金が普通の終身保険よりも低く抑えられています。 しかし、支払い期間が終了するとすぐに支払合計額に対して100%を超える金額になります。(年齢や年数等により100%を超えない場合もあります)

「低解約返戻金型」という言葉は、「保険料支払い期間中に解約した場合は戻ってくるお金が低く抑えられる」、ということを意味しています。
当然その間に解約をしてしまう場合は普通の終身保険よりもリスクが大きいと言えますが、そのかわり保険料を支払い終えた後に解約すれば普通の終身保険よりも高い戻り率で解約返戻金を受け取ることが出来ます。


学資保険との違い

低解終身を学資保険の代わりに用いる場合、学資保険との違いを理解しておく必要があります。

学資保険との違い

1.親が保障の対象
2.親が亡くなった時に死亡保険金が支払われる
3.解約するタイミングを自由に決めることが可能

学資保険の場合、契約者である親が亡くなると以降の保険料を支払う必要が無くなり(=保険料払込免除)i 満期になると予定通り学資金を受け取ることができますが、 低解終身の場合は死亡保険ですので、契約者と被保険者である親が亡くなるとその時点で遺族に死亡保険金が支払われます。

また、満期が決まっている学資保険に対して低解終身には満期が無いため、都合に合わせて解約してお金を受け取ることが可能です。 もしお金が必要なければ、解約せず残しておくことで貯蓄にすることもできます。

金額によっては、保険金を減らすことによって解約返戻金の一部だけを受け取り、残りを老後まで残しておく、 または予定よりも早くお金が必要になった場合でも、保険料を支払い終えた後であればリスク無く解約しお金を受け取れる等、 学資保険よりも受け取るタイミングの自由度が高いことがメリットと言えるでしょう。

もちろん、これらの違いがデメリットになる場合も考えられます。 死亡保険金が即座に支払われるため、実際に学資金が必要になる時よりも早く受け取ることになってしまうと不便になるケースがあります。

また、満期到来で保険会社から通知が届く学資保険に対して、解約を行うタイミングについての通知はありませんので、加入時にあらかじめ 「いつ」解約をするのが良いかを把握しておかなければなりません。
前述の「低解約返戻金型」の特徴も考慮する必要があります。

そしてもう一つ、特に最近学資保険との比較でデメリットとなるのが、「戻り率(返戻率)」の違いです。


戻り率の比較こそが重要

本来、教育費の準備に限らずお金を貯めることを目的とした保険に加入する場合、「支払った金額に対してどのくらい戻るのか」を確認することが大切です。 とりわけ学資保険や低解終身といった場合は支払った金額よりも受け取る金額の方が少なくなる商品(=元本割れ 詳しくはバックナンバー「2013年12月:コラム学資保険を活用するⅡ」をご参考ください)が存在しますので特に重要となります。

実は数年前であれば、学資保険以上の戻り率を誇る低解終身も多く、前述のようなメリットもあって当センターのご相談で低解終身という選択肢をご紹介するケースも数多くありました。 しかし学資保険同様、超低金利時代の中で低解終身も利率が低下し、特に2013年度を境として各社商品の戻り率も大幅に悪化してしまったため、残念ながら今では、元本割れしない 学資保険よりも戻り率に優れた低解終身を見つけることが難しくなっています。

このような現状を踏まえれば、販売サイドからもっと学資保険が提示されるケースがあっても良いはずなのですが、最初に述べましたように今でもなお「低解終身だけ」の提案をされるケースが多くなっているのです。


販売サイドが学資保険を避ける理由

なぜ販売サイドは学資保険を見せずに低解終身だけをテーブルに乗せるのでしょうか?

最大の理由は保険会社から支払われる手数料の金額にあります。 一般的に、学資保険のような保険商品は販売サイドに入る手数料が、低解終身と比べ安く設定されていますので、言い換えれば、消費者に商品を見せる前に販売サイドで手数料を見比べ提案する保険を選り分けてしまっている、ということに他なりません。

もちろん、元本割れを起こす商品が多いため、テーブルに乗せたくても乗せられない、という理由も有り得るので全てのケースが同じだと言い切るつもりはないのですが、 学資保険を見せずに「学資保険よりも良い」保険として提案する、このようなケースが非常に多くなっているのも事実です。

前述の通り、以前程の戻り率ではないにせよ低解終身にもメリットがあり、決して悪い保険ではありませんし、学資保険の代わりとしても有効な保険だと言えるでしょう。

「とにかく戻り率の高い方がいい」「戻り率と保障面のメリット両方欲しい」どちらの考え方も正しいものです。 最終的には、前者であれば学資保険を選択し、後者であれば低解終身を選択する、というのがベストでしょう。ただ、その結論に至るのは両者を見比べてみてからでも遅くはない、というのが私達からのアドバイスです。

お子様のための大切な保険ですから、二種類の保険を良い点悪い点をしっかりと確認して選びたいものですね。





i    払込免除にならない学資保険もあります

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廣川 晴一 (ひろかわ せいいち) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー
■筆者からひとこと
当センターコンサルタントとして2000組以上の法人・個人のライフプランや資産運用などに携わってまいりました。常に相談者のお話を親身に聞かせていただき、的確な情報をわかりやすく伝えられるよう心掛けております。

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